「お互いさま」で支え合い(広報おびひろ平成24年10月号掲載)

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ページ番号1001653  更新日 2020年12月14日

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生きているということは
誰かに借りをつくること

生きていくということは
その借りを返してゆくこと

東日本大震災の避難所に掲示されていた永六輔の詩の一節です。

私たちの生きている社会は、親族、地域、職場などで比較的濃密な人間関係が形成され、それぞれ血縁、地縁、社縁などと呼ばれて、相互に教え合い、助け合い、いたわり合うという相互扶助のシステムとして機能していました。

ところが近年、核家族化、非婚化、長寿化などによる単身世帯の増加や多様なライフスタイル、個人生活を尊重する傾向、さらに雇用形態の変化などにより、支え合いという意識が弱くなってきていると同時に、社会の中で生きているという感覚が薄れてきているように感じます。その典型が一昨年の高齢者の所在不明問題に端を発した「無縁社会」という言葉であり、大きなショックを受けたことは記憶に新しいところです。

高度経済成長期に生まれ育った私たちの世代は、「人に迷惑を掛けてはいけない」と教えられてきました。しかし、迷惑を掛けずに生きている人はまずいないと思います。迷惑を掛けていないという人がいるとしたら、それは社会に対する自覚が足りないのではないでしょうか。また、垣根を作り、借りを作ってはいけないと周りの人と線引きをして、まさに損得勘定を優先させて生きているのではないでしょうか。われわれは生きている限り、周囲に何かしらの世話を受けています。ですから、お互いさまという考えで、自分自身にできることを精一杯行うことが大切だと思います。

個人の生活を尊重することは当たり前ですが、そうあるが故に、余計に相手の生活も尊重しなくてはいけません。お互いにそのように生きていくことで、より自分の生活が豊かになるという発想に至ることが必要ではないでしょうか。

昨年は東日本大震災後の被災住民同士による支え合いを始め、自ら積極的に自分の時間を惜しみなく被災地支援に注ぐ、多くの人々がいたことにより「絆」という言葉が取り上げられ、支え合いの精神がまだまだ健在であることを心強く感じたものでした。

冒頭の詩は、われわれ人間の生き方を考えるとき、それぞれの多様な生き方を認め合い、個人生活を尊重し合う日本人が昔から持っていた「お互いさま」という、忘れてはならない根源的な気持ちを語り掛けていると感じています。

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政策推進部広報秘書室広報広聴課広報広聴係
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