言葉を伝える(広報おびひろ平成29年10月号掲載)
毎月、皆さんにお届けしているこの「広報おびひろ」は、視覚障害者向けの音声版や点字版も作成し、配布しています。
先日、音声版「声の広報おびひろ」の作成にボランティアで協力をいただいている帯広朗読研究会「なすの会」の皆さんと懇談する機会がありました。「音訳は、発音や口調、文節の切り方など、ほんのちょっとした違いで、言葉の意味や伝わり方が違ってくるもの。そのことに細心の注意を払い、聞いてくださる視覚障害者の方々を思いながら、優しく語りかけることを心掛けています」といったお話を伺いました。
作成に当たっては、単に原稿を読み上げるだけではなく、視覚障害者にとって音声だけでは理解しにくいと思われる言葉の読みを、正しく伝わるようにするなどの準備を行った上で、発声の細部に至るまで留意し、「分かりやすく伝える」ことに力を注いでいる。その真摯な姿勢に心を打たれました。
「相手の言葉が理解できない」あるいは「自分の言葉が理解されない」「伝えたことが誤解された」など、言葉が相互にうまく伝わらない経験は、誰もがお持ちなのではないでしょうか。言葉は、互いの意思疎通を図るための手段ですが、私たちの考え方や価値感が人それぞれ異なるように、言葉の使い方や受け止め方も多様です。同じ言葉や表現でも、相手を喜ばせたり、反対に悲しませたり、時に怒らせたりする場合もあります。
相手の立場を思いやり、尊敬語、謙譲語、丁寧語を使い分けてきた日本人ですが、最近では、さまざまな立場にある人が、相手への配慮に欠ける主張や相手を傷つける発言をしたとの報道が目につきます。「言葉は心の使い」ということわざがあるように、日常の心のありようが言葉遣いに自然と表れてしまうのかもしれません。
「相手の立場や気持ちを考え、適切な言葉や表現で、相手に分かりやすく伝えることができているだろうか―」「相手の言葉の意図を的確に受け止められているだろうか―」。なすの会の皆さんの姿勢とも重ね合わせながら、そんな思いに至りました。
人々が互いを尊重し合いながら、心が通じ合う優しい言葉や心地よい言葉で、互いに元気や明るさをもたらす会話が交わされているまち。外から訪れる人が、この地域に暮らす人たちのこうした会話から、おおらかさや穏やかさ、そして品格を感じてもらえる十勝・帯広になると素晴らしいと思います。
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