味のある公共施設(広報おびひろ平成27年5月号掲載)
昭和57年度から33年間稼動し続けてきた学校給食共同調理場。
最後の給食の翌日、小学校で卒業式が行われているまさにその時の出来事でした。
調理場の生命線であるボイラーが力尽き、動かなくなったのです。「新しい給食センターが出来るまで何とかしようと、苦労してきたんです」と話す職員の目には、うっすらと光るものが浮かんでいます。古くなった設備と、それを大切に使い続けた現場。有終の美に向けて、こんな魂の通い合いがあったのかと、胸に込み上げてくるものを感じました。
市役所の本庁舎は、建設から20年余り、動物園や児童会館は、半世紀を超える歴史を持っています。多くの施設で老朽化が進んでいますが、古いからといって、すぐに建て替えたり、なくしたりすることだけでなく、何とかして長持ちさせる工夫も必要です。
一方、施設は長く使われることで、利用する方の愛着が生まれます。児童会館が昭和39年から宿泊学習で受け入れてきた利用者数は37万人。「子どもと一緒に、久しぶりに見に来ました」という笑顔も、しばしば拝見します。
昔と変わらない姿の施設があることで、利用した当時を思い出し、愛着を感じていただいている。愛着があるから、これからも大切に使われ、そこに歴史が積み重ねられるのではないでしょうか。
もちろん、皆さんに愛される施設とするために、さまざまな工夫を凝らすことも大切です。動物園では、子どもたちが、より見やすくなるように、カバ舎に手作りの踏み台を置いています。また、チンパンジーが道具を使ってえさを取り出す姿や、キリンの舌の長さを観察できるように、えさ箱を製作するなど、ハード(施設)が古くても、ハート(心)はいつも新鮮に、楽しい時間を過ごしていただけるよう努力しています。
変わるものと変わらないものが共存し、懐かしさの中に新たな発見がある場所。形あるものはいずれ壊れますが、職員の知恵と市民の皆さんの愛着に支えられながら大切に使い続け、「味のある」公共施設にしていきたいと思っています。
桜の開花とともに、本格的な行楽シーズンを迎えます。緑ヶ丘公園や周辺の施設に遊びに行きませんか。建設から30年が経過した「おびひろグリーンステージ」もお色直しが行われます。私も帯広の春を感じに出かけたいと思います。
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