花の彩り(広報おびひろ平成27年6月号掲載)
日差しに力強さを感じる季節になりました。植物は、これから北国の短い夏を満喫するかのように、太陽に向かって背丈を伸ばし、やがて彩り豊かに花を咲かせます。
人は、人生のさまざまな場面で、感謝や祝福の想いを込めて、花を贈ります。また、食卓に飾られた花や庭先の花など、日常生活の中に花があると、心が癒され、気持ちが明るく、豊かになることを私たち誰もが知っています。花の持つこの不思議な力は、その姿や香りに加えて、色彩の魅力に有るのかもしれません。
日本は、四季がはっきりしており、植物の種類が豊富なことから、日本人には、豊かな色彩感覚が育まれ、草木染めや、花の色に由来する日本文化特有の伝統的な色の名称が数百色も作られたといわれています。
「紫がかった鮮やかなピンク色」である「ツツジ色」、「鮮やかな赤みを帯びた黄色」である「山吹色」、「青みを帯びた紫色」である「桔梗色」など、色彩感覚豊かな日本人が、色彩語彙を補うために、繊細で微妙な花の色合いを表現してきました。
帯広市の花であるクロユリの花びらも、「黒」と言うより、「濃い黒紫色」、あるいは、日本の伝統色でいうと「黒味を帯びた深い紅色」である「エンジ色」に近いのではないでしょうか。
厳しい冬の寒さや積雪の重さに耐えて咲く、深い色合いの花びらと、鮮やかな黄色の花粉をまとった雄しべとのコントラストは、とても印象的で、小さいながらも、生命の息吹きのたくましさを感じます。
例年、とかち帯広空港と大正市街地を結ぶ通称ウェルカムロードや市内中心部において、地域の皆さんのご協力によって、植樹枡に、たくさんの花が植えられています。こうした公共の場に加えて、各家庭の玄関や庭先など、身近な場所においても、花や緑のある空間が広がると、まち全体に明るさが増し、そこに住む人たちの優しさや思いやりの心を感じさせてくれます。そして、そんな市民の皆さんの心が、帯広を訪れる人々への「おもてなし」につながります。
6月は、皆さんが作った自慢の花のバスケットやコンテナを展示する「花コミュニケーションとかち」をはじめ、花と緑に係る各種イベントが開催されます。こうしたイベントを通して、多くの市民の皆さんが花との触れ合いを楽しんでいただき、花のある空間が広がるとすてきだと思います。
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