木の美しさ(広報おびひろ令和3年5月号掲載)

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ページ番号1008900  更新日 2021年4月21日

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長く厳しい冬を乗り越え、木々があおあおと一斉に芽吹く気持ちのよい季節を迎えました。
風に揺れる梢、葉擦れの音、自然の深い香り、隙間から射し込む陽の光。いろいろな表情を見せる木立や森林の中を歩くと、五感が働き、感性が研ぎ澄まされていくように思います。
「木」は、私たちの生活に身近すぎて、普段、ゆっくり目を向けることは少ないかもしれませんが、人生を振り返ると、誰の心の中にも印象深く、思い出に残る木があるのではないでしょうか。
私の記憶にある最初の木は、祖父母の家の裏手、冷たく澄んだ湧き水の小川の脇に立っていたクルミの木です。恐る恐る川の上に張り出した枝によじ登ったり、地面に浮き出た根っこを伝い歩きしたりと、幼い自分にはとても大きい存在に感じたことを覚えています。
以前、地元で俳人として活躍されている方が、「十勝のいいところは、開拓の歴史の中で、子どもたちが引き抜かれた木の根を間近に見られたことだ。」と話されていたのが印象に残っています。開拓者たちはここで生きていくため、たくさんの木を伐根してきました。木は、見えている部分より隠れている根の広がりの方が大きく、巨大な根を目の前にした子どもたちは、苦難を乗り越え、広大な土地を切り拓いてきた先人たちのたくましさを知ると同時に、大きく成長するためには、根をしっかり張ることが大切であると自然と教えられてきたのだと思います。
開拓当時の十勝・帯広に限らず、土地や木材を調達するため、世界中で山林の伐採が進められてきましたが、近年では自然破壊による環境への影響が指摘されています。
帯広市では、高度経済成長期の最中より、自ら開墾した土地に再び木を植え、百年の大計として、市民の皆さんの手で森づくりをするというユニークな取り組みを進めてきています。木や自然を大切にしようとする心を持ち、実践する地域であることが、今、改めて評価されていると感じています。
「木が美しいのは、自分の力で立っているからだ」これは、詩人「坂村真民」の言葉です。会社の役員に就任したばかりの頃、人との関わりに神経を使っていた時に目にしたものです。人の内面と木の佇まいを重ねた言葉に、仕事への向き合い方を諭された気持ちになり、今も心に留めています。
癒しや活力、時には示唆を与えてくれる木。新緑の季節に、身近な木々を眺めてみませんか。

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政策推進部広報秘書室広報広聴課広報広聴係
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