新常態(広報おびひろ令和2年7月号掲載)

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ページ番号1001562  更新日 2020年12月14日

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20代後半に2年ほど、北アフリカにあるアルジェリア第二の都市「オラン」という港町に駐在したことがあります。オランは、フランスのノーベル賞作家アルベール・カミュの代表作「ペスト」の舞台です。
赴任が決まり、新潮文庫で同書を読んでから40年余りが経過した今年、まさか小説に描かれた世界を日本で追体験することになるとは思いもよりませんでした。
「この病気はかかっていない者でも、胸の中にそいつをかかえている。」人間をむしばむ感染症に起因する不条理と人間の様相を、こう表現した小説の一節とそっくりの、胸を締め付けるような空気が世の中を覆いました。
人間は集団で活動することを好み、組織をつくって学習や仕事などに取り組んできました。人やモノ、情報が集積していることに価値が置かれ、数の力が社会を発展させてきたように思います。
しかし、今は人との距離を置き、海外はもとより国内での往来も不自由になり、「密」の状態になることを避けた生活様式を余儀なくされています。また、グローバル化を前提とした経済・企業活動は鈍化し、インフラが密集する都会の脆弱さが浮き彫りになりました。
一方で、コロナ禍をきっかけに、これまでの社会の仕組みや常識などが見直されて、コロナ終息後の世界では、IT技術を活用した社会基盤のもと、生活も仕事も比較的、小さなコミュニティーで完結していくように思います。
そして、人々の価値観や行動が大きく変容していく中で、命の大切さや健康でおいしいものが食べられることなど、「日常」での安全安心な暮らしに勝るものがないことを、私たちは改めてかみしめるのではないでしょうか。
食料を供給し、暮らしを支える農業は、こうした危機を経験したことで一段と注目される時代が来るといわれています。十勝・帯広は、コロナ後の時代にあっても、食や農業といった強みを生かすことで、大都市とは異なる存在感を発揮していけるのではないかと感じています。
カミュはこうも書いています。「一番大事なのは自分の仕事を果たす誠実さだ」と。誰もが利己的で刹那的になりやすい非常時には、誠実な判断と行動を積み重ねていくことが大切だと思います。
勇気と誠実さを持ち、未来を信じて、皆さんと一緒に十勝・帯広という選択肢=新常態を創り上げていきたいと思います。

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政策推進部広報秘書室広報広聴課広報広聴係
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