大切なものは目に見えない(広報おびひろ平成27年2月号掲載)

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ページ番号1001626  更新日 2020年12月14日

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先日、「ダイアログ・イン・ザ・ダーク(DID)」という真っ暗闇の中の体験をしてきました。DIDとは、知らない人が数人でグループを組んで、完全に光が遮断された空間に入り、視覚障害者のサポートのもと、協力しながら探検し、物をつかんだり、音を聴いたりといった、さまざまな行動をするイベントです。
この体験を通じて、日ごろ意識していない大切なことに、改めて気付かされました。例えば、助け合うためにつないだ手の温もり、ふとしたにおいや足の裏から伝わる床の感触。目から情報が入らない時には、こうして他の感覚が研ぎ澄まされてくるものなのかと、再発見と驚きがありました。
さらに、声を掛け合うということの大切さ。暗闇では、自分が何をしようとしているかを伝え、周りから「分かったよ」と返してもらうことが、まるで命綱のようにも感じられました。普段、家庭や職場でどれだけ意識して、声に出して会話をしているでしょうか。気付くということは、五感をフルに使い、コミュニケーションを重ねることから得られるのではないか。そんなことを感じさせてもらえた貴重な経験でした。
この経験で思い出したのが、今月のタイトルである「大切なものは目に見えない」というサン・テグジュペリの名作「星の王子さま」の一節で、きつねが王子さまに伝えた言葉です。
以前、視覚に障害のある人から、「自分たちのことで、他の人に迷惑をかけないように生活をしていかなければと思っています」という話を伺いました。当然、私が気を遣う立場であると思っていたのに、その人は逆の考えを持っていたことに、衝撃を受けた記憶があります。
人は「見えるもの」に頼るあまり、さまざまなことを見失い、見落としているのかも知れません。それは同時に、忘れていたことに気付き、一つ一つ大切にしていくと、温もりのある、豊かな世の中にしていくことができるという、大きなヒントやきっかけにもなると思います。
DIDは、わずか一時間の体験でしたが、一緒に参加した人から、先日、丁寧なお便りをいただきました。暗闇でつないだ手ばかりではなく、心まで温かくなる思いです。そういえば、「星の王子さま」のきつねは、「心でないと、よく見えない」とも言っています。なるほど、こういうことなのかも知れません。

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政策推進部広報秘書室広報広聴課広報広聴係
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