「和食」と「地域づくり」(広報おびひろ平成27年3月号掲載)

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ページ番号1001625  更新日 2020年12月14日

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1月下旬、「地方創生と日本文化の発酵」というシンポジウムに、パネリストとして参加しました。
人口減少時代を迎え、いかに地域を元気にしていくかが全国で検討されていますが、こうした「地方創生」を、文化の視点から考えた会議が、東京藝術大学(藝大)の主催で開かれたものです。特に感銘を受けたのは、日本文化の特徴と和食の伝統とを対比させながら、地域のあり方について提言された、日本画家の宮廻教授の基調講演でした。その一部を紹介します。
―日本文化は、国外の文化を模倣しながら、最終的にはオリジナルを超えてきた。何かを受け入れ、それを超えるという過程は、日本料理の「発酵」に似ている。発酵は、素材の新鮮さを手放し、状態を見極めながら手をかけることで、次元の異なる新しい旨味を手に入れるもの。本質を嗅ぎ分け、時に「さじ加減」することで、新たな旨味にありつくことができる。―
地域を元気にするためには、大切なことを見極めながら、手間ひまかけて地域の良さを引き出し、新たな魅力づくりにつなげることが大切だ、というメッセージと受け止めたところです。さて、「大切なこと」や「地域の良さ」とは、一体どういうものなのでしょう。また、それを見定めていくには、どうしていくとよいのでしょうか。
和食の素晴らしさは、宮廻教授のお話のように、長い歴史を経て磨かれてきた調理技術によって裏打ちされています。一方で、素材の良さを繊細に感じ取ることができる、日本人の鋭敏な味覚によって、技術が鍛えられ、支えられてきた面もあるのではないでしょうか。調理する人がどんなに良いと思っても、食べる人が良いと思わなければ、感動は生まれません。逆に、食べる側に味わう力がなければ、作り手の成長は止まります。双方が高め合うことで、世界に誇る料理へと成長してきたのが、和食であると思います。
まちづくりにも似たような面があります。さまざまな立場の人々が協力し、時に立場を変えながら動き続けることで、地域にとって大切なことを見定め、愛情を持って良さを引き出し、発酵・超越していくこと。これが、「地方創生」を成し遂げるポイントの一つではないかと感じています。
シンポジウムの冒頭、藝大の宮田学長は、和紙に「省」という一字を大書されました。枝葉を省き、地域にとって大切なことを、改めて皆さんと一緒に目を凝らしていきたいと思っています。

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政策推進部広報秘書室広報広聴課広報広聴係
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