食と幸せ(広報おびひろ令和5年12月号掲載)

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ページ番号1016185  更新日 2023年11月21日

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皆さんがこれまで行った旅行で、記憶に残っているエピソードはどのようなものでしょうか。私も子どもが幼い頃は、週末やバカンスシーズンに家族と旅行に出掛けましたが、有名な建造物や公園、その道中の美しい景色のことなど、私が一生懸命に話しても家族はぼんやりとしか覚えていないことがよくあります。しかし、行った先々での食事やレストランのことはしっかりと覚えており、まるで昨日のことのように楽しそうに話します。改めて食の持つ力というか、幸福感との結びつきについて考えさせられます。皆さんにも、こうした心に残る食の記憶があるのではないでしょうか。

昨年、農村地区保育所の給食について関係者から話を聞く機会がありました。令和2年から園内で給食の調理を行う清川保育所では、家庭の味を給食に取り入れようと、子どもが喜ぶ定番料理を募集したところ、21家庭から28のレシピが集まったそうです。季節の行事や誕生日をお祝いする料理、おばあちゃんが孫のために作るおやつなど、それぞれの家庭で愛され受け継がれてきたメニューが、保育所の給食として提供されています。レシピ集は、地域の方にも配布され、家庭や世代を超えて共有される取り組みとなったそうです。

大正地区のことぶき保育所では、子どもたちが毎日遊ぶ園庭の横にある菜園で、多くの野菜を育てています。茶色いひげをたくわえたとうもろこしや、外葉が垂れ食べ頃を知らせる大根など、旬を迎えた野菜を子どもたちが自ら収穫し、その日の給食に並びます。作物が成長していく姿が間近で見られ、自ら収穫する楽しさもあり、野菜が苦手という子も食べてみようという気持ちになってくるそうです。また、近くの農家の方からいただいた食材で、子どもたちが昆布巻きを作ったことがあり、自分が巻いたものが一番おいしいと楽しく言い合いながら、あっという間に食べてしまったそうです。

それぞれの家庭に伝わる料理や、それにまつわるさまざまな文化・物語に触れる。食材が作られるプロセスに関わることで、好き嫌いなく何でもおいしく食べることができる。みんながおいしいと食べているのに、自分だけが食べられないというのは、幸せを一つ逃しているのかもしれません。できるだけ嫌いをつくらない、苦手をつくらないことは、食に限らずさまざまな場面で選択肢が広がり、人生を送る上でも大切なことの一つと言えるのではないでしょうか。

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政策推進部広報秘書室広報広聴課広報広聴係
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