救われた命、失われた命(広報おびひろ令和7年8月号掲載)
「備えていたことしか、役には立たなかった」「備えていただけでは、十分ではなかった」。これは、東日本大震災の実体験に基づき国が作成した「災害初動期指揮心得」の一節です。
近年、日本各地で地震や台風などの自然災害が頻発しています。被災地の状況についてテレビを見ると、道路や建物の損壊、死傷者の数、避難所での生活などが連日報道される一方で、救われた命に関するエピソードも伝えられています。ここでは、そうした中から二つの事例を紹介したいと思います。
一つ目は、平成23年に発生した東日本大震災です。釜石市の小・中学生約570人が、津波発生時に防災教育で学んだ「率先避難者たれ」を実践し、迅速に高台へ避難して全員が助かりました。
二つ目は、平成26年に発生した長野県神城断層地震です。白馬村を中心に甚大な被害が発生し、一時、26人が倒壊した家屋の下敷きになりましたが、近隣住民の協力によって全員が救助されました。
当時、マスコミはこれらの事例を「釜石の奇跡」「白馬の奇跡」と、報じました。しかし、これらは決して奇跡ではなく、日頃からの備えに加え、隣近所の住民同士の助け合いの仕組みなどが、災害発生直後の適切な行動につながり、命を救ったのです。
災害への対応力を高めるには、「自助」「共助」「公助」の三つが機能することが重要だと言われています。市では、公助の取り組みとして、これまでの災害などを踏まえて、備蓄倉庫の整備を行ったほか、避難所の発電機の整備など、いわば事前の備えを進めています。しかし、生死を分ける被災直後の避難や救助の約8割は、自助や共助によるのが現実です。
そして、実際の災害では予期せぬ事態が起き、家族も一緒にいるとは限りません。いざというときにどうやって自分や大切な人の命を守るのか、平時の備えだけでなく、災害初動期の対応が重要になってきます。食料や水などの物理的な備えとともに、日頃の近所付き合いにより顔の見える関係がつくられることで、お互いの安否確認や連れ立っての避難など、災害時の切迫した状況に対応できるのではないでしょうか。
8月31日には、大空学園義務教育学校で地域防災訓練が行われます。避難所体験をはじめ、地域の皆さんと共に学び合える貴重な機会です。ぜひ多くの方に参加していただきたいと思います。
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