十勝・帯広の春(広報おびひろ令和7年5月号掲載)
春といえば、皆さんは何をイメージするでしょうか。「初桜 折りしも今日は よき日なり」。これは俳人の松尾芭蕉がその年初めて咲いた桜を見て詠んだ句だそうです。芭蕉のように、桜の花が咲き始めると、春の訪れを感じ、気持ちがどこか弾むようになる人も多いのではないでしょうか。
桜の開花は、私たちにとって、春を象徴する共通の風物詩です。しかし、本州では比較的早い時期に桜が開花するのに対し、北海道では冬が長く厳しいことから、桜の開花は遅れて訪れます。
私が高校生の頃、国語のテストで俳句の季語を選ぶ問題が出題された際、十勝・帯広の季節感と俳句に詠まれる季語の季節感とのずれに戸惑ったことがありました。テストに出題されるような有名な俳句は、京都など本州の風景を題材に詠まれたものが多くあります。例えば、京都で俳句に桜が登場する場合、3月や4月の春の季語として使われます。しかし、これを十勝・帯広に置き替えると、その季節はまだ桜も咲いておらず、北国で見る景色は本州のそれとは異なるのだと感じていました。
本州では梅の花が咲いたあと、3月中旬から下旬頃にかけて気温の上昇とともに桜前線が北上し、春が訪れます。しかし、北海道ではまだ、朝晩は冷え込む日があったり、雪が残っていることも珍しくなく、4月下旬になってようやく桜が咲き始めます。
そして5月を迎える頃には、本州では早くも春から初夏へと季節が移り始めますが、北海道では雪解けが進み、眠っていた大地が一斉に目を覚ますかのように、桜に加えてさまざまな花が一気に咲き、草木も芽吹き始めます。長い冬を過ごした十勝・帯広に暮らす人々にとって、この時期はまさに待ちに待った特別な瞬間といえるのではないでしょうか。
鮮やかな花々の色彩、爽やかな新緑、そして木々の香り―。冬の真っ白い世界から一転して、春景色に変化する。生命の息吹を感じられるような北国の春の到来は、私たちの気持ちを明るくし、未来に向かって希望を抱かせるきっかけになるようにも感じています。
市内ではもうすぐエゾヤマザクラが開花し、野草園では春の野花も楽しめるようになります。また、5月24日には緑ヶ丘公園で新緑まつりも開催される予定です。十勝・帯広に訪れる、短くも凝縮された圧倒的な春を感じに、皆さんも外に出掛けてみてはいかがでしょうか。
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