市政執行方針
令和7年度
はじめに
令和7年第1回帯広市議会定例会の開会に当たり、市政執行に対する所信を申し上げ、市議会議員、並びに市民の皆様にご理解とご協力をお願いするものであります。
「天の時は地の利に如かず、地の利は人の和に如かず」
「天の時」とはチャンス、好機を逃さないこと、「地の利」とはポジショニング、優位な位置にいること、「人の和」とはチーム、同じ志を持った人の集まりのことです。
私は、まちづくりにおいて、来たるべき「天の時」を掴むためには、「地の利」を高め、「人の和」を築くことが大切であると考えております。
日高山脈の山々から流れる清らかな水、みどり豊かな広大な大地、そして、食を生み出す農業は、いつの時代も変わらない大切な価値であります。
私は、先人たちがこれまで守り、受け継いできたこの基本価値に、将来のさらなる発展の可能性を感じ、フードバレーとかちの旗を立て、管内町村との一体感を高めながら、食・農、自然の強みをさらに向上させ、地域の魅力を発信し、十勝・帯広の新しい価値づくりを進めてきました。
これまで、農業の生産基盤の強化をはじめ、関連産業の集積や投資の促進、販路開拓などを進め、食の付加価値の創出などにつなげてきたほか、近年では、日高山脈の国立公園化や高速道路網の整備といった、積み重ねてきた取り組みが徐々に形となり、十勝・帯広の「地の利」は高まってきています。
十勝19市町村の連携から始まったフードバレーとかちの取り組みに共感する多くの方々と、新たなビジネスの創出や起業家人材の育成などの挑戦を続けてきたことで、今では、域外企業とのつながりや起業家コミュニティが生まれ「人の和」も広がりを見せています。
現在、世界では、地球温暖化や人口増加、新興国の経済成長を背景に食料や水の確保、エネルギー需要の増加が深刻化してきており、経済成長のみならず社会や環境の問題を互いにつなげて考え、持続可能な社会をめざすSDGsの理念が広がっています。
こうした中、とりわけ十勝・帯広には、食料自給率の向上や備蓄などの食料安全保障への対応、地球温暖化対策といった課題の解決や新しい価値の創出につなげる取り組みが求められています。
フードバレーとかちの取り組みを通し、前向きに行動する人たちの和が広がり、今、世界的な課題解決に貢献しうるポジションにある十勝・帯広に、まさに「天の時」が到来しつつあると感じております。
私は、この機会を捉え、食や自然などの価値を守り、さらに向上させながら、異なる分野との連携をはかり、今やるべき将来への投資を行い、すべての市民の幸せにつなげていく考えであります。
主要な施策の推進
次に、主要な施策について、総合計画の体系に沿って申し上げます。
ともに支え合い、子どもも大人も健やかに暮らせるまち
はじめに、「ともに支え合い、子どもも大人も健やかに暮らせるまち」について申し上げます。
健康・医療につきましては、HPVワクチンキャッチアップ接種の延長や帯状疱疹ワクチンの定期接種化などを進めるほか、中学生を対象としたピロリ菌検査の実施時期等の見直しを行い、受検率の向上をはかります。
子育て支援につきましては、母子保健と児童福祉の連携強化を通じ、子育てに困難を抱える家庭等への包括的な支援を行う「こども家庭センター」の設置に加え、市内6か所の地域子育て支援センターに地域子育て相談機関を併設します。
また、待機児童の解消に向け、児童保育センターのクラブを増設するほか、豊成保育所の円滑な民間移管を進めます。
福祉につきましては、ひきこもり当事者への就労体験機会を提供するほか、認知症の人やその家族を支援するグループの活動を促進します。
また、介護人材を安定的に確保するため、研修の受講料を助成するほか、手話言語条例制定10周年を契機として障害者理解を促進する体験型イベントを開催します。
社会保障につきましては、生活に困窮した人の住居確保給付金を拡充するほか、国民健康保険制度や介護保険制度等の持続的な運営に努めます。
活力とにぎわいと挑戦があるまち
次に、「活力とにぎわいと挑戦があるまち」について申し上げます。
農林業につきましては、かんがい事業などの生産基盤の整備を進め農業経営の安定化に取り組むほか、令和9年に開催される全国和牛能力共進会への支援や自給飼料の増産と質の向上に向けた八千代公共育成牧場の採草地の更新を進めます。
また、農村地域の活性化をはかるため、老朽化した愛国農業センターについて、消防団詰所との複合化による整備を進めるほか、森林環境譲与税を活用した森林整備や担い手確保等に対する支援を行います。
ばんえい競馬につきましては、新たに設立した一般社団法人に競走実施事務の業務委託を行い、運営体制の強化を進めます。
また、競走馬の安定的な確保につなげるため、報償費を見直すほか、診療体制のあり方について検討を行います。
地域産業につきましては、事業の規模拡大や法人化を促進するため、新たに伴走型の創業・起業支援に取り組むほか、民間事業者と連携し、十勝の農畜水産物を活用した商品開発・販路拡大を進めます。
また、市内中小企業等の人材確保をはかるため、奨学金返済を支援する企業などへの補助制度を創設します。
交流人口の拡大に向けては、訪日外国人旅行者の受入環境に関する調査や多言語パンフレットの作成を行うほか、アドベンチャーツーリズムを推進するため、アイヌ古式舞踊の観光コンテンツ化やツアー造成などに取り組みます。
また、令和8年度の宿泊税の導入に向け、特別徴収義務者となる宿泊事業者に対し、徴収事務に必要な初期経費の補助を行います。
広域交通につきましては、とかち帯広空港の滑走路端安全区域などの整備や利用促進に取り組みます。
ともに学び、輝く人を育むまち
次に、「ともに学び、輝く人を育むまち」について申し上げます。
学校教育につきましては、南町中学校の長寿命化改修や増築工事に取り組むほか、小・中学校の体育館照明のLED化や中学校の空調設備の整備、一人一台端末の計画的な更新などを行います。
また、中学校の教職員の負担軽減等をはかるため、部活動指導員を配置するほか、歯・口腔の健康づくりを推進するため、小学校におけるフッ化物洗口の実施を拡大します。
文化芸術、学習活動につきましては、動物園において、乳幼児を連れた方が利用できる休憩施設や園路を整備するほか、馬ふれあい舎に道産子を導入し、動物展示を充実します。
また、図書館や市民文化ホール、とかちプラザの設備の更新などを進めるほか、老朽化が進行している児童会館と百年記念館について、時代に即した施設のあり方の検討を進めます。
スポーツにつきましては、フードバレーとかちマラソンなどのスポーツイベントを開催するほか、全国・全道大会に参加する児童・生徒等への支援額を拡充します。
また、帯広の森陸上競技場の大規模改修に向けた実施設計を行うほか、帯広の森屋内スピードスケート場の照明器具のLED化を進めます。
安全・安心で快適に暮らせるまち
次に、「安全・安心で 快適に暮らせるまち」について申し上げます。
環境保全につきましては、再生可能エネルギーの活用を促進するため、太陽光発電システムや蓄電池等の導入支援を拡充します。
また、日高山脈襟裳十勝国立公園の自然環境の保全などをはかるため、利用ルールやマナーの啓発、情報発信等に取り組みます。
防災・減災につきましては、指定避難所の機能強化をはかるため、非常用発電機の整備や防災無線の更新等に取り組むほか、災害時に特に支援が必要な方の個別避難計画の作成を進めます。
消防・救急につきましては、老朽化した大正第2分団詰所について、農業センターとの複合化による整備を進めるほか、指令システムやデジタル無線機器の更新などに取り組みます。
安全な生活環境につきましては、防犯灯の帯広市への移管に向け、町内会の意向を調査するほか、消費者被害の未然防止のため、情報提供や相談業務に取り組みます。
上下水道につきましては、水道管路の耐震化や稲田浄水場の地震対策、汚水処理の統合に向けた施設改修などを行うほか、水道料金・下水道使用料体系の検証に取り組みます。
都市基盤につきましては、道路や公営住宅の整備、橋梁の長寿命化、除雪車両の更新などを進めるほか、立地適正化計画の策定に向けた調査を行います。
また、中島霊園合同納骨塚における新たな納骨室を整備するほか、中心市街地活性化に向けて行われるイベントの支援等に取り組みます。
公園、緑地につきましては、帯広の森と市民との接点をつくり、利活用の促進をはかるため、間伐材を利用した、乳幼児用玩具の製作を行うほか、緑ヶ丘公園エリアビジョンに基づき、多様な主体による魅力向上の取り組みや帯広少年院跡地における民間や公共利用、公民連携による利活用の検討を進めます。
市民主体のまちづくり・自治体経営
次に、市民主体のまちづくりと自治体経営について申し上げます。
地域社会活動につきましては、大空会館の移転改築に向けた実施設計に取り組むほか、国際友好都市の朝陽市、国際姉妹都市のマディソン市との周年事業として、相互派遣交流などを行います。
自治体経営につきましては、窓口手続きのオンライン予約サービスの導入や業務システムの標準化に向けた移行作業を進めるほか、マイナンバーカード等の更新手続きに対応するため、交付窓口の体制強化に取り組みます。
また、市役所庁舎の長寿命化に向けた調査や実施設計を行うほか、旧南商業高校跡地の利活用をはかるため、埋設物調査などを行い、売却に向けた検討を進めます。
物価高騰対策
最後に、物価高騰対策について申し上げます。
物価高騰の影響を受けている世帯や事業者を幅広く長期に支援するため、令和7年5月から6か月間の水道料金の基本料金免除を行います。
また、食材価格の高騰に伴う保育所、幼稚園等の副食費や学校給食費の保護者負担の軽減を行うほか、障害福祉施設や保育施設の光熱費などに対する支援を行います。
以上、令和7年度の主要施策について申し上げました。
むすび
「天」 あおあお
「地」 ひろびろ
「人」 いきいき
未来を信じる 帯広
真っ青で高い空、広大な大地のもとで、心地よい空間と時間にやさしく包み込まれ、誰もがいきいきと暮らせるまち、帯広。
私は、仕事や生活といった都市の利便性と自然やみどりといった地方の魅力を合わせ持つこの地で、現在のみならず、将来世代の利益に資する選択肢を残していく視点も大切にしながら、まちづくりを進めていく考えであります。
市議会議員の皆様をはじめ、市民の皆様の一層のご理解とご協力を重ねてお願い申し上げ、市政執行方針といたします。
このページに関するご意見・お問い合わせ
政策推進部企画室企画課
〒080-8670 帯広市西5条南7丁目1番地
電話:0155-65-4105 ファクス:0155-23-0151
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