平成29年度市政執行方針
はじめに
平成29年第1回定例市議会の開会にあたり、市政執行に対する所信を申し上げ、市議会議員の皆様、並びに市民の皆様にご理解とご協力をお願いするものであります。
私は、市長就任以来、十勝の中心都市としての帯広の役割を常に念頭に置きながら、多くの方々と対話を重ね、誰もが幸せに暮らせる地域社会の実現をめざし、全力で市政執行にあたってまいりました。
さまざまな分野において、次代につながる新たな取り組みが生まれ、地域の可能性がさらに広がっています。
今後も、この地が開拓以来、醸成してきた進取の精神や結束力をもとに、多くの方々と明るい未来への想いを共有しながら、一つひとつの可能性の芽を伸ばし、十勝・帯広のさらなる飛躍につなげてまいる決意であります。
時代の潮流とまちづくり
わが国は、人口減少社会への移行や、成熟社会における経済の低成長、大規模災害の危険性の高まりなど、複雑多様な課題に直面しています。
さらに、グローバル化の中での保護主義の動きや、紛争・テロの脅威など、世界情勢は不透明感を増しつつあります。
こうした社会・経済の環境変化や、将来に向けて不確実性が高まる中にあって、これからの時代にふさわしい持続可能な国のしくみをつくるため、社会保障や教育、産業経済、行財政など、さまざまな制度改革が進められてきています。
地方においては、大都市圏への人口流出や諸機能の集中、地域経済の縮小、地域コミュニティの衰退など、乗り越えなければならないさまざまな課題が生じています。
変化する社会情勢の中で、これからの地方は、自立的で活力ある地域社会の基盤を、自らの意思と責任でより確かなものにしていかなければなりません。
地域社会は、各々が固有の歴史と文化を持つ、一つのまとまりのある存在です。
私は、そこに住む人たちの知恵と力を集め、その強みを最大限に活かすことで、地域が魅力を高め、輝きを放つことができると信じています。
十勝・帯広は、農林漁業を基幹産業とし、都市と農村が密接な関わりを持ちながら発展の歩みをともにしてきた、一体性の高い地域です。
そこには、豊かな自然、食や農、空間・時間のゆとりなど、大都市圏にはない強みや魅力があります。
その基盤を活かし、「フードバレーとかち」の取り組みを推し進めてきたことで、新たな仕事や人の流れを創出し、投資を呼び込み、地域経済の活性化に結びつけてまいりました。
さらに、幅広い分野でのこれまでの取り組みにより、都市の利便性の向上、医療・福祉、子育て・教育などの生活環境の充実がはかられ、人口の堅調な推移につながっています。
私は、開拓者の気概を受け継ぐ意欲ある人たちと、この地がめざす未来に共鳴する域外の人たちとの価値共創から、十勝・帯広創生の確かな流れが生まれてくると考えています。
大いなるチャレンジが実を結び、新たな芽が現れてきているこの時機をとらえ、多くの方々と力を合わせ、「自主・自立のまちづくり」を進め、希望の未来を切り拓いていく覚悟であります。
まちづくりの基本方向
十勝・帯広は、豊かな自然のもと大規模農業を営み、わが国有数の食料基地として発展してまいりました。
今日では、観光、環境・エネルギーをはじめ、「食」の強みを活かした新たな展開が広がってきています。
また、住民の主体的な活動による人々の多様なつながりが、コミュニティや福祉などの担い手づくりや、身近な地域における支え合いなどに結びついています。
私は、産業振興、人材育成、まちの基盤づくりが相互に連関することで、地域の活力や安全安心で快適なまちにつながり、誰もが幸せに暮らせる地域社会が実現していくものと考えています。
こうした考えのもと、平成29年度は、以下の三つを重点に、将来に向けた自立基盤の強化に取り組んでまいります。
【活力ある地域経済をつくる】
一つ目は、【活力ある地域経済をつくる】であります。
十勝・帯広では、「フードバレーとかち」の取り組みを通し、農林漁業の生産力向上や「食」の高付加価値化、体験・滞在型観光の推進などをはかってまいりました。
事業者の主体的な挑戦により、農畜産物の輸出拡大や健康機能性食品の開発、新たな事業アイデアの創発、観光客の増加などにつながってきています。
私は、グローバル経済の流動化や競争の激化、人手不足などの厳しい情勢の中でも、この地の産業経済は、確かな発展の足がかりを見出してきていると考えています。
今後、急速に進む環境変化に対応し、自立的で活力ある地域経済をつくるため、これまでの蓄積をステップに、農業の基盤強化や製品・サービスの差別化などを進め、収益性が高く変化に強い産業を形成していく必要があります。
このため、関係団体等と連携し、農業の生産基盤整備や台風被害からの迅速な復旧に取り組むほか、新規作物の導入支援や先進技術を活用したスマートアグリの促進など、農業の成長産業化を進めてまいります。
また、産業の競争力強化に向け、域内外の連携を深めつつ、事業創発のしくみづくりや食のブランド化、製品開発・販路拡大などに取り組んでまいります。
さらに、外国人観光客の受入環境の充実や、アウトドアを中心とした体験・滞在型観光の推進、とかち帯広空港の機能拡充などを通し、交流人口や観光消費の拡大をはかってまいります。
【未来につなげるひとをつくる】
二つ目は、【未来につなげるひとをつくる】であります。
時代が急速に変化する中、持続可能な地域社会を築く上で、将来に向けた人材の確保・育成がますます重要となっています。
帯広市では、福祉や環境、文化・スポーツなどのNPOの取り組み、高齢者の交流や支え合い、大学生・高校生による自主的な活動など、住民主体のまちづくりが展開されています。
また、学校支援ボランティアや子どもの居場所づくり、幼保小中の連携、多様な保育サービスの提供など、地域ぐるみの子育て・教育支援が進んでまいりました。
人づくりの動きが進展する一方、核家族化やライフスタイルの多様化等を背景に、ボランティアの固定化や子育て世代の孤立化などへの対応が求められています。
今後、未来につなげる人づくりに向け、市民活動の促進や子育て・教育の取り組みなどを通し、誰もが能力を高め、発揮できる地域づくりを進めていく必要があります。
このため、団体間の交流や、市民提案による協働の取り組みなどを促進し、多様な主体のまちづくりへの参画をはかってまいります。
また、保育・教育施設の整備や、子育て世代への切れ目ない支援などを通し、子どもたちが健やかに成長できる環境づくりを進めてまいります。
さらに、産業・福祉等の人材育成や、学生によるまちづくり活動への支援などを通し、地域の担い手づくりを促進してまいります。
【安全安心に暮らせるまちをつくる】
三つ目は、【安全安心に暮らせるまちをつくる】であります。
昨年、十勝・帯広は、未曽有の台風被害に見舞われました。
今日においてなお、交通や産業をはじめ、日常生活に大きな影響を及ぼしています。
地震災害の多発や風水害の激甚化などのリスクが全国で高まる中、今回の経験を教訓としながら、地域全体で防災・減災に対する意識を共有していかなければなりません。
また、自然災害にとどまらず、市民生活を取り巻く課題はますます多様化しており、公共施設等の老朽化や、高齢化に伴う認知症の増加などへの対応が重要となっています。
今後、安全安心に暮らせるまちづくりを進めるためには、将来を見据え、市民と行政との役割分担や情報共有のもと、ハード・ソフトの両面から、さまざまな課題への対応を強化していく必要があります。
このため、台風被害からの迅速な復旧をはじめ、避難所等の機能や防災体制の充実など、地域防災力の強化に取り組んでまいります。
また、公共施設やインフラの適切な維持管理に向け、公共施設マネジメント計画等に基づき、耐震化や長寿命化などを進めてまいります。
さらに、高齢者が住み慣れた地域で安心して暮らせるよう、介護保険施設の整備や地域包括ケアシステムの構築などを進めてまいります。
以上、まちづくりの基本的な方向について申し上げました。
主要な施策の推進
次に、主要な施策について申し上げます。
平成29年度予算につきましては、災害復旧や総合計画の着実な推進などをはかるため、政策・施策評価の結果を踏まえつつ、国の交付金等を活用した平成28年度補正予算との一体的な編成に努めたところであります。
以下、総合計画の体系に沿って申し上げます。
【安全に暮らせるまち】
はじめに、【安全に暮らせるまち】について申し上げます。
防災につきましては、備蓄品等の更新・購入や避難所誘導標示板の整備、川西合同庁舎の耐震改修など、防災体制の強化をはかるほか、台風による被害を受けた明星橋や河川緑地、八千代公共育成牧場などの復旧工事を行ってまいります。
また、地域における防災活動の促進、帯広競馬場のスタンドや民間住宅の耐震化の支援に取り組んでまいります。
このほか、消防ポンプ自動車の更新や通学路の歩道の再整備、防犯・交通安全の意識啓発など、安心して生活できる環境づくりを進めてまいります。
【健康でやすらぐまち】
次に、【健康でやすらぐまち】について申し上げます。
保健・医療につきましては、生活習慣病の予防や心の健康づくりを促進するほか、公衆浴場の利用を通した高齢者の交流・健康増進を支援してまいります。
福祉につきましては、介護予防・生活支援サービスの提供を開始するほか、地域包括支援センターのサテライトの設置や、介護保険施設の整備などを進めてまいります。
さらに、高齢者や障害者を取り巻く社会情勢の変化や法改正の動向等を踏まえ、関連計画の策定に取り組んでまいります。
子育てにつきましては、私立保育園の改築支援や川西児童保育センターの増築のほか、特定不妊治療や不育症治療への助成、産前産後のサポートなど、子育て世代への切れ目ない支援に取り組んでまいります。
【活力あふれるまち】
次に、【活力あふれるまち】について申し上げます。
農林業につきましては、生産基盤整備や新規作物の導入支援、GPSを活用した精密農業の普及促進に取り組むほか、豆類の集出荷施設の整備を支援してまいります。
また、森林の適切な管理や間伐材の活用のほか、黒毛和牛の生産振興に取り組んでまいります。
ばんえい競馬につきましては、公正競馬を確保しつつ、新たなファン獲得やコスト削減など、安定経営に引き続き取り組むほか、帯広市単独開催10周年の記念事業を実施してまいります。
商工業の振興及び中小企業の基盤強化につきましては、産学官金が連携し、産業人の育成や製品開発・販路拡大などを進めてまいります。
また、創業・起業の促進に向け、域内外の人材の触発による事業創発など、起業候補者の発掘から事業化支援までを一貫して推進するしくみづくりに取り組んでまいります。
産業間連携につきましては、十勝の「食」に対する住民理解の促進に取り組むほか、地元産食材の高付加価値化や新たなマーケットへの進出などを支援してまいります。
観光につきましては、平原まつり70周年の記念イベント開催のほか、中心市街地における外国人観光客の受入環境整備、広域連携による海外プロモーションなどを進めてまいります。
また、ファームツーリズム等の推進のほか、アウトドア観光のブランド化に向け、マネジメント組織であるDMOの設立やポロシリ自然公園の整備などに取り組んでまいります。
なお、景気対策として、国の経済対策などを活用し、規模や発注時期等に配慮しながら、公共事業や雇用対策を進めてまいります。
【自然と共生するまち】
次に、【自然と共生するまち】について申し上げます。
環境保全につきましては、廃棄物の資源化や適正処理、新エネルギーの導入促進などを通し、環境負荷の低減をはかってまいります。
公園・緑化につきましては、中央公園北側広場の整備に向けて取り組むほか、街区公園の遊具等の更新、帯広の森の園路や築山周辺駐車場の整備などを行ってまいります。
また、緑化重点地区である稲田川西地区において、市民協働により花の植栽を実施してまいります。
水道・下水道につきましては、災害用備蓄資器材の充実や浄水場・処理場の老朽化対策、下水道管の長寿命化のほか、農村上下水道事業の公営企業会計への移行作業を進めてまいります。
【快適で住みよいまち】
次に、【快適で住みよいまち】について申し上げます。
住環境の整備につきましては、環境負荷を低減し、長期にわたり使用できる住宅の新築に対する助成や、住まいのワンストップ相談窓口の開設、空家等対策など、住まいに関する総合的な支援に取り組んでまいります。
また、市営住宅の建替えや改修、高齢者向け公的賃貸住宅の整備を進めてまいります。
道路につきましては、幹線や生活道路の整備、橋りょうの点検・補修を進めるほか、冬期間の交通確保や生活環境の向上のため、除雪車両の増車や町内会への小型除雪機の貸出しを行ってまいります。
交通ネットワークにつきましては、とかち帯広空港の管理運営に関する調査や、国際チャーター便等の受入体制強化に向けた施設整備などを進めてまいります。
【生涯にわたる学びのまち】
次に、【生涯にわたる学びのまち】について申し上げます。
学校教育につきましては、学校施設の長寿命化や、小中学校における適正規模の確保等に向け、計画の策定などを進めてまいります。
また、学校施設の改修や教材備品の更新、こども学校応援地域基金プロジェクトの推進など、教育環境の充実に取り組んでまいります。
さらに、就学援助の充実や、知的学級等の開設、特別支援教育補助員の増員などを行ってまいります。
高等教育につきましては、関係機関などと連携し、十勝の発展に必要な人材育成や高等教育機関の整備・充実に向けた取り組みを進めてまいります。
生涯学習につきましては、動物園の展示動物を充実するほか、「フードバレーとかちマラソン」の継続開催や、PFI方式による新たな総合体育館の整備などに取り組んでまいります。
【思いやりとふれあいのまち】
次に、【思いやりとふれあいのまち】について申し上げます。
ユニバーサルデザインにつきましては、公園内の段差解消や多目的トイレの設置のほか、ユニバーサルデザイン住宅の新築・増改築等に対する助成を行ってまいります。
地域コミュニティにつきましては、町内会をはじめ、多様な組織の連携を促進するほか、地域住民と協力しながら、コミュニティ施設の適切な管理・運営を進めてまいります。
親善交流につきましては、徳島市との産業文化姉妹都市締結35周年を記念した訪問団の派遣を行ってまいります。
【自立と協働のまち】
次に、【自立と協働のまち】について申し上げます。
市民協働につきましては、広報おびひろやホームページ、市民対話の機会などを通した情報発信に努めるほか、市民提案型の協働事業などにより、まちづくりへの市民参加を促進してまいります。
自治体経営の推進につきましては、ふるさと納税に地域の魅力を伝える返礼品を導入するほか、次期総合計画及び各分野計画の策定に向けた検討を進めてまいります。
行財政の運営につきましては、適正な業務執行を徹底しつつ、帯広市行財政運営ビジョンなどに基づき、引き続き、効率的で効果的な取り組みを進めてまいります。
むすび
以上、平成29年度の市政執行にあたり、私の考えを申し上げました。
国内外のさまざまな状況が変化する中、これからの地方は、自らの手で未来を切り拓く強い意志を持ち、努力を重ねていかなくてはなりません。
「未来を予測する最善の方法は それを発明することである」
私は、こうした意識で、たゆまず行動し続けることが大切だと考えています。
十勝開拓の祖・依田勉三が薫陶を受けた福沢諭吉は、西洋列強のアジア進出が続く厳しい国際情勢の中で、一身独立して一国独立すると説きました。
地方が自らを律し、自立することなくして、国全体の活力は生まれません。
私は、この想いを心に刻みながら、「自主・自立のまちづくり」を進め、将来に向け持続的に発展する十勝・帯広を築いていく所存であります。
市議会議員の皆様をはじめ、市民の皆様の一層のご理解とご協力を、心からお願い申し上げ、市政執行方針といたします。